· 【活動報告】中国学の再創生(研究代表:川島真)第一期活動報告

0.概要

 2018年からの最初の半年間は比較的順調に進んでいる。
 おこなった活動の概要は以下の通りである。第一に研究主幹を加え、事務組織などを構成するなどして事務体制を整え、第二にウェブサイトを立ち上げてアーカイブ化ができるように、また対外発信ができるようにした。第三に、研究会をスタートさせ、その成果の出版の目処を立てた。第四に、2019年夏の大学院生、若手研究者向けのサマースクールを実施すべく、院生幹事会を組織し、プログラムの検討をおこなった。第五に、世界の中国研究との議論の場を設けるべく、主に東南アジアとの連携を模索した。このほか、日本の中国研究のセンターを形成していく試み、模索は継続している。

1.会計支出

 本研究の採用が決定したから、大学の経理で経費を扱えるようになるまでに二ヶ月前後を要した。
 2018年からの半年間は、組織形成、ウェブサイトなどのインフラ整備、また研究会の立ち上げなどが主な活動内容であったので、会計支出はそうした基礎的な経費(人件費、ウェブサイト関連費用など)を中心としている。今後、遠方からの研究会報告者などを招聘する際には一定の支出があるが、主たる支出は2019年9月のサマースクールや国際交流においてなされることが予想される。なお、経理面は事務担当の川崎真美が担当している。   

2.活動状況

(1)研究体制·事務体制の整備
 本研究計画が採用される際に財団から頂いたアドバイスをもとにして研究主幹を補充したが、さらに世代や専門を考慮して中堅研究者2名を補充して合計9名体制とした(青山瑠妙、天児慧、加茂具樹、川島真、小嶋華津子、園田茂人、高原明生、中村元哉、丸川知雄)。
 また、事務体制を整えるべく、川島真研究室の教務補佐員を本プロジェクトの事務担当者とするとともに、大学院生三名を東京大学のRAにするかたちで本プロジェクトの事務サポート、ウェブサイト管理を担当させることとした。今後、国際交流などが活発になれば、担当者を増やす可能性もある。

(2)ウェブサイトの立ち上げ
 研究活動内容や情報の蓄積(アーカイブ化)、および対外発信のためにウェブサイトを立ち上げた( http://webpark2055.sakura.ne.jp)。大学が契約しているレンタルサーバー業者を通したために手続きに時間がかかり、2019年には入ってサイトを立ち上げ、内部公開を経て2019年3月から外部公開とした。
 コンテンツは、目下のところ活動内容を蓄積し発信することになるので、本研究プロジェクトの概要、運営会議の議事録や研究会のレジュメなどを目下のところ掲載している。プロジェクト概要や研究会レジュメは対外公開としているが、運営委員会議事録などはパスワードをかけて対外非公開としている。
 今後、研究会活動部分について要旨を中国語、英語とすることや、研究主幹からのメッセージなども掲載していくことを想定している。なお、ウェブサイトはRAの景閔(東京大学大学院総合文化研究科博士課程)が担当している。

(3)運営委員会の開催
 本研究プロジェクトの採用後、2018年10月8日(木)に天児慧教授、高原明生教授と準備会合を開催し、その後、以下のように研究主幹から構成される運営委員会をおこなった。またこの会議には記録係としてRAのうち1名が同席している。議事録は研究代表者が作成して、適宜、ウェブサイトにアップしている。

①第一回運営委員会
 日時:2018年12月12日(水)14:00-15:00
 場所:東京大学公共政策大学院院長室
 参加者:青山、天児、川島(記録)、小嶋、園田、高原、丸川(敬称略)
②第二回運営委員会
 日時:2019年1月16日(水)12:00-12:15
 場所:東京大学東洋文化研究所3階大会議室
 参加者:川島(記録)、小嶋、園田(敬称略)
③第三回運営委員会
 日時:2019年1月29日(水)12:00-12:20
 場所:東京大学東洋文化研究所3階大会議室
 参加者:青山、天児、加茂、川島(記録)、小嶋、園田、高原(敬称略)
④第四回運営委員会
 日時:2019年3月25日(月)
 場所:東京大学東洋文化研究所3階大会議室
 参加者:青山、天児、加茂、川島(記録)、小嶋、園田、高原、丸川(敬称略)

(4)公開研究会の開催
 「中国の再創生」プロジェクトの行う研究会としてどのようなことをおこなうべきか、園田教授と研究代表者が話し合う中で、日本の中国研究の辿ってきた軌跡を個々のディシプリンごとに振り返り、現在を位置づけ、今後の課題を考えることを主題とするアイディアが練られ、運営委員会で承認され、実施に移された。
 この主題を設定したのには幾つかの理由がある。第一に、世界の多くの国や地域の中国研究が戦後から説き起こされるのに対して、日本の場合は戦前の研究蓄積を有しており、それが日本の中国研究の特徴ではないかと思われた点がある。第二に、それを個々のディシプリンが戦後にどのように継承したのか、あるいはしなかったのかということも必ずしも意識化されていないと考えられたからである。第三に、そもそもこのような議論を、ディシプリンの垣根を越えておこなったことがほとんどなかったのではないか、ということだった。そして、第四に世界的に、とりわけ欧米において中国研究のあり方が議論され、また中国内部でも「国学」という中国自身のコンテキストに即した中国研究が主唱される中で、今一度の日本の中国研究の軌跡を振り返り、現状を位置付けることにも意義があると思われる点がある。
 そのため、個々の報告において、そのディシプリンが①何を問題としてきたのか、中国理解の上で、それがなぜ問題だったのか、②その問題をどのように解決しようとしてきたのか、何が明らかにされ、何が課題とされたのか、③現在、そのディシプリンでは何が問題とされているのか、といったことを報告することにした。そしてその経緯については、戦前からトレースすることにした。
 研究会はおよそ一ヶ月に一度開催することとし、園田教授が会場を提供し、合わせて研究会の司会を担当した。研究会の概要は以下の通りである。

◎第一回研究会
 日時:2019年1月16日(水)10:30-12:00
 場所:東京大学東洋文化研究所3階大会議室
 報告者:川島真
 報告内容:外交史
◎第二回研究会
 日時:2019年1月29日(水)10:30-12:20
 場所:東京大学東洋文化研究所3階大会議室
 報告者:天児慧
 報告内容:地域研究
◎第三回研究会
 日時:2019年3月25日(月)15:30-17:00
 場所:東京大学東洋文化研究所3階大会議室
 報告者:小嶋華津子
 報告内容:中間団体論

 これらの研究会は公開でおこなわれ、報告者や研究主幹のほか、少なからず参加者が見られた。また、研究会を通じて、こうしたディシプリンごとの課題や研究の展開を戦前から語ることの難しさを実感するとともに、この会合の意義を見出すことができた。今後は研究主幹が報告をおこなうとともに、外部報告者にも報告を依頼していくことになっている。なお、この成果は東京大学出版会から刊行する方向で同出版会の内諾を得ている。また、それを踏まえ、研究報告を録音し(一部は録画)、それをテープ起こししている。

(5)大学院生向け中国研究サマースクール実施に向けて
 本研究プロジェクトの主眼の一つは若手研究者の養成にある。そのため研究主幹の学生を中心にして大学院生幹事会を形成し、彼らが主導してサマースクールを2019年9月に東京大学駒場キャンパスで開催することになった。これは公開でおこなわれ、広く全国に応募を募る。遠方からの参加者への交通費、宿泊費なども補助していく予定である。
 2019年4月から幹事会を開催し、その幹事会でサマースクール準備会としての研究会を開催し、サマースクール終了後も研究会として継続していくことを想定している。
◎幹事会メンバー
 早稲田:周俊
 慶應(三田):金牧功大
        早田寛
        許楽
 慶應(SFC):新田順一
        安田翔鷹
 東大(駒場):高栁俊秀
        景閔 
        徐偉信 
        河合玲佳 

(6)国際交流について
 本プロジェクトの今一つの主眼は国際的ネットワークの構築にある。2019年3月、研究代表者がマラヤ大学中国研究所を訪問し、Ngeow Chow Bing所長との意見交換をおこなった際、現在、同大学を中心に東南アジアの中国研究をレビューする計画があるとの話があり、それが公刊された際に、執筆者の一部を日本に招き、日本と東南アジアの中国研究について相互に比較し、議論する機会をもつことを検討することになった。現在、引き続き連絡をおこなっている。
 他方、ウェブサイトを立ち上げてから、海外の中国研究機関から共同研究集会の開催を打診されており、必要に応じて実施していく予定である。

(7)そのほか
 本研究が二年間で終了することを視野に入れ、中国研究センター(仮)構想の実現に向けて関係者が引き続き関連する諸方面に働きかけをおこなっている。

3. 次期に向けての課題

 2ですでに記したように、第二期(2019年4月から9月)では、①研究会の継続と外部報告者への依頼、②大学院生サマースクールの開催(2019年9月中旬)、③中国研究をめぐる国際会議の開催検討が具体的な活動上の課題となる。また、①の書籍化に向けての検討も必要となる。このほか、ウェブサイトの多言語化という課題もある。
 経費の面では、事務局体制やウェブサイト維持の経常経費のほか、②のサマースクール開催や①で遠方からの外部講師に報告を依頼するケース、また③での打ち合わせなどでの支出が予想される。

4. 会計報告書

                                       以上