現在、激動期にある世界の一つの原動力は中国であり、多くの関心が集まっています。そのような中で議論の対象になるのは、米中間の覇権交代や地政学上における中国の位置付けといった問題だけではなく、技術革新に基づくライフスタイルや価値観の創出といった「新たな時代」における主導者の一人に中国がなり得るのかという問題も含まれています。
過大評価は禁物ですが、中国の隣国である日本、またその周辺にある東アジア諸国は、他の地域よりも中国の影響を強く受ける状況にあり、その影響は、国家のあり方のみならず、社会や個々の生活、自己認識にも及んでいます。それだけに、日本や東アジア諸国では他地域よりも一層「中国理解」が強く求められてきました。
そしてその中国理解に関して、日本には重厚な蓄積と高い潜在力があります。日本は世界有数の中国学の学知を有し、潜在力も高いものの、そこには課題があります。すなわち、日本の中国研究に関する知的資源が分野、組織ごとに寸断され、成果の発信も不十分であっただけでなく、新たな時代に対応するアイディアやビジョンを提示する場が不足しているという点です。そこで本プロジェクトは、第一に日本の中国研究の蓄積を国内外に向けて発信する方法を検討し、第二に中国の新たな姿に対応した、新しい中国研究の方法について議論する場と機会を創出し、第三にそうしたプラットフォームを特にアジア諸国の中国研究者と共有していく基礎を構築することを目指します。